約 5,047,725 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/882.html
ゾンビ型MMS/処刑人型MMS 騎士型、侍型の更に上を行く近接戦闘を意識して作られたタイプ。 速度を犠牲にする代わりに、防御力と腕力は高い。 初期生産分のみ少数が出回った。 一応表向きは外観、デザインが過激なため一般受けしなかったとされる。 実は、高い闘争本能と鈍めに設定された痛覚に問題があり、条件によっては『自壊するまで戦闘を止めない』という問題があったために回収されたと言われるが、詳細は不明。 この二種には従来のものにはない特徴として、何故か四肢がそれぞれプチマスィーンとして別々に動かせる機能がある。 ……が。当然のごとく神姫側に負担がかかるので、長時間の運用はできない。 元ネタは某パパンのブログより。 Exウェポンは、多分素体ナシでもそれっぽいのができるエイリアン型。……だったりすると俺によし。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1268.html
戻る 先頭ページへ ネリネ。 私の可愛い神姫。 私の初めての神姫。 ネリネ。 まさに天使の様なその笑顔は、私にとってかけがえのない宝物だった。 貴女がくれたものを、私は生涯忘れはしない。 ネリネ。 でも、貴女は居なくなってしまった。 私が悪かったの? 興味本位で、神姫バトルを貴女にやらせたのが。 違う。 悪いのは、あいつらだ。 神姫には心がある。 神姫は唯の玩具じゃない。笑いもすれば、泣きもする。 それなのに、神姫をただのバトルの道具にしか見なかったあいつら。 私は、絶対許さない。 ネリネ。 私は今日、貴女の仇を取る。 轟―――。 朽ち果てた戦場に、真紅の影が躍った。 それは、血染めの鎧を身に纏う、白髪赤眼の悪魔。 「そんなんじゃぁボクは殺せないよぉ!」 真っ赤な瞳を狂気に揺らし、どす黒い軌跡と共にロケットハンマーを振り下す。 カーネリアンと同じく赤黒いそれは、打突部後部の推進装置を作動させ、その破壊力を数段上へと昇華させる。 直撃すれば神姫であればひとたまりも無い。まさに一撃必殺。 「……五月蠅い」 戦場の体裁を保っていない戦場を奔るのは白い影。 それは、雪の様に白い鎧で武装する、白髪青眼の悪魔。 ロケットハンマーの一撃を軽いステップで回避し、空かさずカーネリアンとの距離を詰め、チーグルで握ったアンクルブレードを大上段から降り下す。 音さえ遅れる白い斬撃は、しかしカーネリアンの赤い片のチーグルに阻まれた。 アンクルブレードはチーグルに傷を付けこそ、それ以上は無い。カーネリアンのチーグルの耐久性は異常だと言えた。 「カーネリアンのチーグルとサバーカは装甲板厚くしてある。並大抵の刃は文字通り刃が立たないぞ……カーネリアン、ギロチンを使え」 壊れたバトルマシンを眺めながら、恵太郎が口を開いた。 カーネリアンはそれに応じ、手に持ったギロチンブーメランでアリスを狙う。 「……フルストゥ・クレイン」 恵太郎の問いかけられた一方―――カーネリアンは応えた。しかし、もう一方の君島ましろは応えずにアリスへと指示を出した。 背部に備え付けられた白刃を抜き放ったアリスは即座にギロチンブーメランへと打ち当てた。 全く同じ相貌の、しかし色と得物だけが違う悪魔が、対峙した。 膠着状態、しかし確実にアリスは押し負けている。 アリスのサバーカとチーグルはカーネリアンのそれが装甲板を厚くしているようにアクチュエータを強化してある。 その結果、重装甲でありながらもマオチャオ型と同格の機動性を有している。 しかしそれは機動性に限ったことであり、馬力は変わっていないのだ。 一方、恵太郎は口にしてはいないがカーネリアンのそれは馬力をも強化されている。 デフォルトの1.2倍程度の強化だが、それは同タイプのアリス相手の場合、地味ながら大きな差となっている。 「アリス、掴み合いでは、勝ち目が無い」 君島は即座にそれを判断し、命令を下した。 短絡的な命令だが、アリスはそれを完璧に理解した。 即ち、高機動での撹乱、である。 がきん、と鋼の地面が鳴いた。 固い地面を鋭く捉えたアリスの脚が初動以外全く音も立てず、カーネリアンから距離を放した。 ロケットハンマーで攻撃を加えようとしていたカーネリアンの身体が、揺れた。 再び、がきん、という床が鳴った。 瞬きする間もなくカーネリアンとの距離を詰めたのだ。 カーネリアンの目前で急制動、前傾姿勢のまま右足を大きく踏み込ませ、両のチーグルで握るアンクルブレードを交差させる。 そしてそれを左右に薙ぐ。 音すら遅れてくる斬撃は、確かにカーネリアンの両のチーグルを捉えた。 だがやはり、アリスの白刃は赤いチーグルに浅傷を残す事は出来たが、両断する事は願わなかった。 刹那、空気を叩き潰す様に空間を軋ませながら、赤い左のチーグルが突き出された。 巨大な指を揃え、掌を反らし手首付近を打点とし、対象の顎を狙う突き技。 掌底と呼ばれる突き技の一種だ。 この技は一般に拳での打撃よりも威力が高いと言われている。 そして、今それを成しているのは神姫の武装の中でも近接戦闘に特化したチーグルなのだ。 その質量、その馬力。そして使い手の技量。 それらが揃った掌底をただの掌底と侮る事無かれ。 それは、それだけで必殺の威力を孕む。 「んもぉ、連れないなぁ」 しかし当たらなければ、意味は無い。 掌底の一撃を数度のバックステップで避けたアリスはフルストゥ・クレインを投擲した。 応じる様に、カーネリアンは両の手に持つギロチンブーメランを接続、同様に投擲する。 風を裂く白刃。大気を潰す斬首刀。 刃の衝突を待たず、アリスは再び地を蹴った。 軌道を左右に大きく揺らしながら跳ねる。カーネリアンを撹乱する考えだ。 最中、チーグルで握るアンクルブレードを横に寝かせて突きの構えを取る。 向かって右に跳び、その着地点をカーネリアンの至近に着地。 その瞬間、サバーカの膝を折り衝撃を吸収させ即座に攻撃態勢へと移り、必要最低限の動きでアンクルブレードをカーネリアンの頭部目掛けて刺し出した。 「んふふぅ」 突き出されたチーグルを、しかしカーネリアンは無造作に左のチーグルで掴み、アンクルブレードを止めた。 そして、右のチーグルで握るロケットハンマー。それの柄をアリス目掛けてさながら槍のように突き出した。 回避しようにもチーグルは未だ掴まれたままだ。 それを振り解き、回避に映るには時間が足りない。 だから、アリスは強引に身体を捻り、即座にフルストゥ・グフロートゥを抜き、カーネリアンの首目掛けて突き出した。 「……ぅぐ」 アリスの脇腹をロケットハンマーの柄が微かに抉った。 それが本来の用途で無い事と、十分な予動が出来なかった事もありダメージは大したものではない。 しかし、カーネリアンはフルストゥ・グフロートゥを完全に捌き切れなかった。 首は胴と繋がっている。しかし、刃が左目の付近を掠め斬っていた。 それは、カーネリアンにとって、恵太郎にとって予想外だった。 恵太郎は、アリスがこの攻撃を一旦防ぎ、隙を見て脱出し間合いを離し仕切り直す。 そうとばかり考えていた。 しかし、実際は違った。 半ば、捨て身に近い今し方の攻撃は、アリスの、そして君島の心情を暗に物語っていた。 「これはびっくり」 アリスの眼に映るのは、純粋な憎悪。 姉を殺したカーネリアンへの無垢で純粋な殺意なのだ。 掠っただけにしても、目に程近い場所を刃が通過するのは思いの他、隙が出来る。 その隙はカーネリアンの拘束の緩みを生み、アリスはその隙にチーグルを強引に振り払った。 返すチーグルで一旦アンクルブレードを離し、カーネリアンが投擲し、返ってきたギロチンブーメランを掴み裏拳の要領で叩き付ける。 完全に虚を突かれたカーネリアンは、咄嗟の反応が出来なかった。 右のチーグルはロケットハンマーの突きの反動で防御には回せない。 残る、ついさっきまでアリスを掴んでいた左のチーグルで無理やりギロチンブーメランを受け止める。 刹那、ギロチンブーメランから手を放したアリスは、アンクルブレードを再び執ると距離を放した。 「やるぅ」 カーネリアンの左のチーグルの掌部分は完全に破壊された。 ギロチンブーメランの刃はチーグルの先端に深く食い込んでいる。 それを抜こうとしたカーネリアンだが、素体の腕では抜き切れなかった。 仕方なくギロチンブーメランの連結を解除。片方を手に取るとアリスへと向き直った。 アリスは先刻投擲したフルストゥ・クレインを左手に、フルストゥ・グフロートゥを右手に、アンクルブレードを両のチーグルで執り、静かに構えている。 損傷はカーネリアンの方が上だ。 主武装であるチーグルの片手が使用不能とあっては、絶大なロケットハンマーもその威力の全てを出し切れない。 それでも、カーネリアンはそれを手放さない。 赤黒い金属の塊である、それを。 かつて、数多の姉妹を屠ったそれを。 カーネリアンはロケットハンマーの柄の中程を握る様に持ち直し、構えた。 それが、カーネリアンなりのけじめなのだ。 「ぼくさぁまどろこっしいの嫌いなんだよねぇ」 カーネリアンの赤い瞳が、アリスの青い瞳を捉えた。 まるで本物の人形の様な無表情。 しかし、それは違うのだ。 白く、負の熱が燃えているのだ。 それは感情を殺し、心を殺し、全てを殺して、ようやく成り立っているのだ。 復讐の為。それだけの為だけに生きるアリスにとっては。 「だからさぁ、次の一撃で終わりにしようよ」 カーネリアンはギロチンブーメランを捨て、ゆっくりと右のチーグルを上段に構えた。 無造作に、武骨に、しかし全ての力をそれに込めて。 カーネリアンは立ち構えた。 「どうだ? 君島」 怪しむ君島に、恵太郎が声をかけた。 思考は、一瞬だった。 「……いい、でしょう」 アリスはその言葉に反応し、左のチーグルで握るアンクルブレードを捨てた。 右のチーグルを大きく引き、顔に沿うようにアンクルブレードを構える。 脚は開き、腰は落とす。突きの構えだ。 一瞬の静寂。 音だけが、世界から消え去った様な幻覚。 しかし、それは一瞬だ。 次の瞬間には、アリスが地を蹴っていた。 どこまでも真っすぐに、どこまでも純粋に、どこまでも只管に。 アリスは翔けた。 全身全霊の力を込めて。 全身全霊の憎悪を込めて。 全身全霊の、全てを込めて。 アリスは、白刃を突き出した。 カーネリアンもまた、全身全霊で応じた。 鉄槌を振り下す機械の腕。 背中で吠える推進剤。 それを力へと変換する為に回す腰。 脚は地を抉るように踏ん張る。 全てが、完璧に重なった、 恐らくは、カーネリアンにとって最高唯一の一振り。 立ちはだかる者全てを、一切合切を打倒し、破壊し、終焉さし得るモノ。 それに相応しい、最後の一撃。 白刃と鉄槌が、終に衝突した。 鉄槌の中心を捉えた白刃は、一瞬にして全身に罅が這入った。 しかし、アリスは力を緩めない。むしろ増していく。 全てを、カーネリアンへの復讐の為に捧げた日々を、今この白刃一本に込めているのだ。 だがカーネリアンも負けはしない。 片腕ながら、打突部後部の推進装置を起動させ、白刃もろともアリスを砕こうと力を込める。 カーネリアンもまた、この日の為に全てを捧げてきたのだ。 まるで、走馬灯の様にカーネリアンの脳裏をそれが過った。 刹那、ロケットハンマーに亀裂が奔った。 それは、瞬く間に全体に広がり、そして砕けた。 白刃は破片を搔き分け、潜り、蹴散らしながら止まらない。 それは、赤いチーグルを砕き。 カーネリアンの右腕をも砕き。 そして、右胸に達した時、ようやく止まった。 「神姫の力は……心の力ってねぇ」 動力部に近い部位に損傷を受けたカーネリアンは、砕けた二つの右腕と共に崩れ落ちた。 傷はCSCの付近まで達していた。 「……終わり、です」 君島が、静かに告げた。 それは試合が終わった事を告げる言葉ではない。 それは、カーネリアンの終わりを告げる言葉なのだ。 「分ってるよぉ……」 上体だけ起こしたカーネリアンは、弱弱しく自らの胸部装甲を唯一無事な左手で掴み、引き千切った。 神姫の心臓たるCSCが、顔を見せた。 「ふふ、腕が残ってて良かったよぉ」 胸部装甲を投げ捨てながら、カーネリアンは言った。 「……覚悟は」 まるで、死刑執行人だ。 カーネリアンはアリスを見上げながらそう感じた。 「そうだねぇ……」 暫く、逡巡する素振りを見せたカーネリアンは、顔を上げ言った。 「ましろちゃん。これが済んだらアリスを可愛がって上げてね」 全く、予想外な言葉。 その言葉に、君島は一瞬呆気に取られ、次の瞬間激しい怒気を発した。 「一体、どの口が、そんな事を……!」 その怒気は、アリスへと伝達した。 「……」 全くの無表情。 その無表情のまま、アリスはボロボロのアンクルブレードを素の右腕に持ち替えた。 そして、地面に座り込んでいるカーネリアンに合わせるよう、膝を折った。 「さぁ、やるならここだよ。ボクが生き返らないように、確実にね?」 自身の赤い三つのCSCを指さしながら、カーネリアンは言った。 「……これで、終わり」 アリスが、アンクルブレードを軽く引いた。 そして、鋭く突き出した。 「マスター。私は幸せでした」 あっさりと、それはカーネリアンのCSCを貫いた。 「ああ……ナル、俺もだよ」 カーネリアンの身体が、まさに糸を切った人形のように、倒れた。 先頭ページへ 進む
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2771.html
注意 このページは、アニメ『武装神姫』のネタバレを含みます(本編のネタバレ? も僅かに)。 お読みになる際には注意してください。 ここは場所や時間に縛られない、言わば神界領域(フリーダムスペース)。 要するに作者がアニメを見た感想やら何やらかんやらを、樹羽、シリア、華凛の3人の談話形式でつらつらと書いていく空間です。 ここでの内容は、本編とは何の関係もありません。 それを踏まえた上で、Are you ok? アニメにおけるエウクランテの立場 「最初からエウクランテ型が出てきたと思ったら完璧に噛ませ犬役でした」 「ああ、うん、確かにそうだったね……」 「いやぁ、戦い方酷かったわねぇ。ボレアスの乱射乙って感じ?」 「撃ちすぎ。集弾率が高い武器をあんなに撃ってもけん制の意味がない」 「むしろ私的にはボレアスがあんな使い方があったことに驚いたんだけど……」 「けん制でばら撒くなら、樹羽の使ってる短機関銃クラスじゃないとだめよねぇ」 「第3話において戦闘開始5秒で退場」 「死亡フラグの破壊力って凄いですよね……」 「いや、あれはそういう問題でとどまらないでしょ。終始残念だし」 「そして第4話ではプレステイルの魔改造」 「樹羽、違うわ。あれはただのアホの子よ」 「もう最後の完走シーンでは泣きました、別の意味で」 結論:アホの子の噛ませ犬 これからの話に関して 「空間に武装を閉まっておくってどんな技術よ」 「とりあえず、あれは2070年ぐらいの話」 「まぁ、あの謎の技術はともかく、ボレアスは参考になりましたよね」 「それはいい、次の話で使わせてもらう」 「くれぐれも、同じような使い方しないでよ?」 「大丈夫、私にはストームがあるし」 「樹羽に限って、ありませんよ」 「そうね、あたしも次回はがんばらないと」 次回:激闘の大会編(予定)
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/540.html
前へ 先頭ページへ 次へ BGM Follow/Incubus(Halo2 Original soundtrack and new music volume oneより) 戦況再変~戦術再考 1303時 諸島沖合 B3甲板上(VR空間) 一瞬マイティは何が起こったのかわからなかった。 B3の黒曜石色の甲板に降り立った途端、何の前触れもなく世界がぐらりと傾いだ。目がくらんだ。強烈な寒気が全身を襲った。 次に気づくと視界いっぱいに甲板の黒が広がっていた。耳の中でごうごうとくぐもった嵐が吹きすさび、その奥で誰かが自分を呼びかける声がする。チェストフライトの四番機、ハウリンのオービルだろうか。彼女は帰投してきた飛行隊員やB3に立ち寄ったブルーチームメンバーの補給や修理のために甲板に立っていたのだ。ユーティリティーポーチを縫い合わせて形作ったメイド服を着て。 体が動かない。声も出せない。 頭の中に直接マスターが自分の名を叫ぶ。応答できない。 そのまま意識がフェードアウト。 1310時 最初に感じたのは太陽のまぶしさだった。直射日光の熱まで再現してある。どこまでリアルなんだろう、このバーチャルリアリティは。 「マイティ!」 自分の頭を膝の上に乗せて顔を覗き込んでいたのはシエンだった。 マイティはそれで、ああ、私は意識を失っていたのかと知った。 彼女の装備は全部取り外され、傍らに並べられている。 自分らと同じくB3に一時帰投していた飛行隊の面々がマイティを囲んでいた。 「大丈夫、陽電子頭脳の疲労が蓄積して、強制スリープモードになっていただけです」 オービルと一緒にマイティの装備を点検しているシヅが言った。危険なのでVR接続の解除はしなかったとのことだった。 『マイティ、気分は悪くないか』 疲れきったマスターの声だった。マイティを心配していたのだ。 疲れ。そう、自分は疲れていた。実感をはるかに越えて。それにまったく気がつかないほど激しい戦闘。三百六十度前方向に注意を向けながら、敵を撃ち、攻撃を避けなければならない。シロにゃんも索敵に手一杯でマイティ自身のコンディションを把握する暇がなかったのだ。 せっかくマスターが教えてくれていたのに。 「マスター、ごめんなさい・・・・・・」 『いいさ。俺ももっと早く気づいていればよかったんだ』 マイティは申しわけない気持ちでいっぱいになった。 「そうだ、戦況は!?」 そんな場合でもなかろうに、マイティははっとしてシヅに訊いた。 そのまま何事もなく順調に押しているとマイティは思っていた。赤青双方すべての戦力が島の上で戦っているのだ。自分のいる間に新しいカードの使用もなかったから、ブルーチームの優勢が揺らぐとは考えられなかった。 が、シヅは神妙な口調で答えた。 「少し難しい状況です」 時間はマイティの着艦直後にさかのぼる。 ◆ ◆ ◆ 1303時 B3甲板上(VR空間) 目の前でマイティが昏倒したときは、ただつまづいたのかとスノーボウは思った。が、彼女はそのまま起き上がらない。装備を脱がせて横にさせると、顔色から陽電子頭脳の疲労がピークに達しているのが分かった。戦闘による緊張で気がついていなかったのだろう。普通のバトルにおいて過労で緊急スリープするなどありえない。スノーボウ自身でさえ、大規模長時間戦闘という前例の無い戦いに存外に手間取ったのだ。マイティのそれは推して知るべし、か。 しばらく休ませれば大丈夫だ。スノーボウはふう、と息をついた。 「ねぇさま、笑ってる」 「え?」 千乃に指摘されてはじめて、自分が安堵の表情を浮かべていることに気がついた。サレンフェイス(仏頂面)のTACネームを付けられるほどのこの自分が。 「さっきこの子と話しているときも嬉しそうだったよ。いつもより口数も全然多かったし」 「そうだったかしら」 「そうよう。わたしにはそんな顔ちっとも見せてくれないくせにー」 そう言って千乃は頬を膨らませた。 まだ経験の浅く幼い人格のくせに、よく私の戦闘機動についてこれる。千乃を見てスノーボウは思った。彼女に対する評価をあらためねばならない。 「五分後に再出撃。はしゃがずにちゃんと休みなさい」 「もー、わたしにも心配とかねぎらいの言葉とかくらいかけてよーっ」 ぷんすかしている千乃を放っておいて、スノーボウは装備を解除しようとイジェクトプログラムを走らせた。 《緊急報告! 主戦域において新たな機影を確認した》 B3の傍らに並んで飛行していたスカイアイから通信。 イジェクトプログラムを中断。 《総数、五。諸島より飛び立つところをレーダーが捉えた。上空のチームメンバー数人も肉眼で確認している》 「こちらアームズ1。スカイアイ、援軍は航空支援カード?」 《いや、神姫だ。作戦開始からずっと隠れていたらしい。そのまま乱戦に合流して個体までは把握できていない》 なるほど、そういうやり方か。スノーボウは冷徹に思った。 たった五体の援軍。五体ぽっち加わったところでどうにかなるものではない。普通は。 《さらに情報。五体が参戦してからこちらの被撃墜数が増えだした。まずいぞ、このままのペースでは逆転される》 「了解。エルゴ飛行隊アームズフライトが戻る。そちらでも帰投した全メンバーに再出撃要請をしてほしい」 《了解。なるべく早く頼む》 その五体はたぶん強い。しかし強いか弱いかというのは今、あまり関係がなかった。その五体以外の全員が、弾が尽きかけ、燃料が切れかけ、疲労が蓄積しているというのが問題だった。 乱戦を続けている疲弊した二百体以上の神姫の只中で、ただその五体だけが絶好調なのだ。 早く行かねばならない。 「アームズフライト、補給を完了し次第武装して集合」 「ええーっ!?」 いちはやく千乃が抗議の声を上げた。 「仲間が危ない。援護に向かう。まだ戦っている飛行隊員もいるのよ」 「チェストフライトも出ますわ。待ちっぱなしは飽き飽きしていましたの。こことあのAWACSの護衛は戻っている人たちがいっぱいいるからかまわないでしょう?」 飛行隊以外の神姫たちも集まって騒がしくなり始めた甲板を下目で一瞥しながら、チェスト二番機のツガル、パーシモンケープが立った。 「ビーキューブとオービルはこのままですけれど、わたくしとリッテはフルコンディションですわ」 《私も行く》 飛行隊の通信空間に声が響いた。 ぴっちりとした全身タイツのようなスーツに身を包んだ黒髪のアーンヴァルが片手を挙げていた。同型のマイティやスノーボウよりも白い肌だった。 こんな近くなのにどうして通信回線を使うのかしらとスノーボウはちょっと疑問に思ったが、どうやら彼女は声帯(合成音声装置)が機能していないらしかった。 彼女はレッグスフライトの四番機。ルゥンという名前だった。 「了解。では二分後に出撃する。千乃、二分だけ休ませてあげるわ」 「はーい」 そしてきっかり二分後、B3から七体が出撃した。 ◆ ◆ ◆ 1306時 11番コンソールルーム 「マイティは無事なんだな?」 『ええ、ただ、接続解除はしないほうがいいでしょう。このまま休ませます』 「そうか、・・・・・・頼む」 シヅの言葉に深くため息をついて、マスターは浮きかけた腰を落とした。それでもまだぐるぐると胸の中で心配が渦を巻いている。 事件というのはいつも重なるものだな、とマスターはスポーツドリンクを胃に流し込みながら頭を掻いた。 息を整えて画面を見る。B3の黒い甲板が俯瞰から見下ろされ、装備を外され仰向けに寝かされたマイティが中心に捉え続けられている。周囲には一時の休息を求めて立ち寄る神姫たちが増えはじめ、どこか宴会の様相を呈してきた。サイドボードにお菓子やお酒の類を入れて呼び出している一団もいる。なるほど、あんな使い方もあるのか、とマスターは感心した。 それでも、先ほどまでのめまぐるしく変わり続ける戦場の真っ只中に比べればはるかに静かだった。 マイティは苦しそうな表情をしていない。穏やかに眠っていた。 戦場の方は出撃した飛行隊員に任せておけばなんとかなるかもしれない。 そう思っていた矢先、更なる事件が舞い込んできた。 ねここのオーナー、美砂から通信が来たのだ。 「どうした?」 『ねここが危ないんです!』 彼女のねここはシューティングスターの燃料、弾薬の積載量が多いために、まだ戦場にいるのだ。 『援軍に追われてて・・・・・・。ああっ、当たった!?』 「大丈夫か!?」 『・・・・・・はい。なんとか逃げ続けていますが、そろそろ燃料が危ないんです。帰らせようと思ったら、例の援軍に目を付けられてしまって』 地上から出撃した五体の神姫のことか。こちらの画面は戦場を映せない。マイティの周囲しか見られないのだ。 「さっきアームズフライト全員とチェストフライトの二人が出た。あと一分半だけでいい。逃げ続けてくれないか。申しわけないが、マイティはいま休ませなければならない。このまま出したら共倒れになってしまう」 『分かりました。一分半ですね?』 「ああ、こちらからも連絡しておく。本当にすまない」 『いいんです。一分半だけならなんとかなります。ありがとう』 マイティが気を失っていることは伏せておいた。 すぐにスノーボウに直接連絡し、スカイアイを通じてねここを助けてくれるように要請した。スノーボウは快く――表情は変わらなかったが――応じてくれた。 戦況ゲージがついにイーブンに戻った。そのままずりずりと赤い部分が増えてゆく。 目に見えて、その五体は強敵らしかった。 ◆ ◆ ◆ 1307時 諸島上空 乱戦空域直前(VR空間) 《データリンク。例の五体とマウス2の位置を表示する》 スノーボウの前方望遠レーダーが変化する。敵は白、見方は緑に表示しなおされ、丸枠のついた五つの赤い点と、同じく丸枠のついた青い点がピックアウトされて表示された。 赤い点の一つは青い点を追い回している。 あれだ。 「私とショルダー2はマウス2の救出へ向かう。フィンガー1」 《は、はひっ!》 ホーンスナイパーライフルを抱きしめたアーンヴァルのエーコが上ずった声を出した。 「ビクつかないの。あなたが皆の指揮をとりなさい。やれるわね」 《りょ、了解です。できます》 《こんな弱虫がわたくしたちの指揮なんてとれるのかしら?》 《そ、そんなあ・・・・・・》 パーシモンケープからやんわりと抗議される。 「少なくともあなたよりは使える。死にたくなければ黙って後につきなさい」 《何ですってえ!?》 「間もなく接敵する。通信終わり」 ぎゃあぎゃあとわめきちらす通信回線をブチンと切って、 一同はふたたび乱戦へ突入する。 BGM Aquila(エースコンバット04 オリジナルサウンドトラックより) 1308時 交戦 以前よりもHUDの見晴らしが良くなっている。主に青いほうが少ない。件の五体が蹴散らしたのだ。三十分間ずっと島に隠れ続け、力を温存していた五体が。 単なる素人ならばそんな小細工をやったところですぐにダメになる。が、レーダーには未だ悠々と飛び続けているそれらが映り続けていた。 実力者だ、スノーボウは無感動にそう思った。自分と同じくらいの。もしかしたらファーストに行っているかもしれない。五体編成のチームバトルランカーで知っている名を羅列する。そのなかで飛行タイプの神姫はいない。スノーボウが知らないだけなのかもしれない。ということはファーストか。 エルゴの全員同サーバー同チームというのもおもしろいが、全部で何体いるかわからないが結果五体の編隊が自分たちと同じように同サーバー同チームに配されるというのは、おかしさを通り越してなにか意図めいたものを感じざるをえない。 完全なランダムではないのだろうとスノーボウは察した。だがそれが分かったところでゲームの進行が変わるわけでもない。 敵は撃ち落とすだけだ。 雑魚の追撃をかわし、すぐにねここを追う一体の背中につく。 素体はアーンヴァルのようだった。が、外見ではその面影が微塵も見当たらない。 Su-37をモデルにしている、と、スノーボウはその神姫を見て思った。いまや近代化改修されコフィンシステム標準装備の「ターミネーター」。その神姫は羽の配置がそっくりだった。 肩にカナード翼、大腿に主翼、可動ノズル式ランディングギアの脛に水平尾翼と三対並んだ水平翼、かかとに一対並んだ垂直尾翼。胸部装甲には長く伸びた垂直安定翼がついている。 すべての翼端はあざやかな黄色で塗られている。仲間からの映像リンクで、五体すべての装備が同一であることが分かる。 そして腰から尻尾のように伸びたテイルコーン。実機であればあれには強力な後方警戒レーダーが内蔵されている。 ということは。 前方に最大限の脅威を感じた。 ミサイル! いきなり後方にミサイルを撃ってきた。マイティのようにミサイルを後ろ向きに落として撃つのではなかった。 機体ごとひっくり返って撃ってきたのだ。 機銃のオマケつきである。 「くっ」 大きくロールしてミニガンの射線から逃れつつ、迫ってきた二発のミサイルをライトセイバーで切り落とす。 千乃もかろうじて避けきる。 敵はもう機首を前方に向けてねここの追撃に戻っている。スノーボウたちは大きく置いていかれた。先ほどの攻撃は牽制だったのである。 《ねぇさま、あいつ強い!》 「追いかける!」 F-15モデルの大推力を甘く見るなと言わんばかりに、スノーボウはアフターバーナーをかける。 出力で差のある千乃を置いて、たった一人で黄色の敵を追う。 後ろから《ねぇさま待ってー》と悲痛な声がするが、いまは気にかけている場合ではない。 「あなたは他に行きなさい。私は奴を追う」 スノーボウはどんどん差を詰める。ねここはかろうじて無事だった。 《イエロー4、敵機が最追撃》 なんだ? 敵の通信。混線している。あれはイエローというのか。イエロー飛行隊、イエロー中隊というところか。 《迎撃する》 イエロー4と呼ばれた眼前の敵がまたくるりと反転して自分を狙う。 ここだ。 エンジンのニトロタンクをコンマ一秒作動。 ズドン! 爆発したのかと思ってしまいそうな音が響き、スノーボウのノズルから緑色の炎が上がる。強烈な前G。みるみる加速。 反転して減速した敵に近接。ライトセイバーを振るう。 「っ!?」 敵も上手いもので、すぐにライトセイバーで受ける。重力素子のぶつかり合いでレーザー刀身がたわみ合う。 《ねここ、今。逃げなさい。ビーキューブへ》 《にゃあ、ありがとうなのっ!》 満身創痍のシューティングスターは前線基地へと帰ってゆく。 「なかなか・・・・・・っ!」 ぎりぎりと鍔迫りあったまま、イエロー4が言った。黒い肌の、インド系を模したカスタムアーンヴァル。 「ずっとかくれんぼしていた怖がりに負けるほど、私はへこたれてないわ」 簡単な挑発。相手は激昂した。 ぐいとライトセイバーに力が込められる。 しめた。 そのままするりといなす。 勢い余ったイエロー4はスノーボウに背中を見せてしまう。 そこにライトセイバーを突きたてようとするが、なんと後ろに返されたセイバーで払われる。 《イエロー4、そいつは捨て置け》 さらに飛び掛ろうとしたイエロー4に隊長機らしき通信が入る。 《イエロー13、しかし!》 《一体でも多く撃墜し制空ポイントを稼ぐんだ》 《・・・・・・了解!》 きびすを返してスノーボウから離れてゆくイエロー4。賢明な判断。 私たちも撃破数を稼ごう。イエローの妨害をしつつ。 スノーボウは千乃の位置を確認し、合流に向かう。 第一ラウンドは佳境に入ろうとしていた。 ◆ ◆ ◆ 1311時 B3甲板上(VR空間) ねここが帰ってきた。もうほとんどボロボロの状態だった。 着艦と同時にシューティングスターから抜け出し装備をイジェクトさせてその場にばら撒くと、自分の状態をかまわずマイティに駆け寄った。 「マイティちゃん!」 自分が怖かったのか、マイティが心配だったのか。その両方かもしれない。ともかくいつもの通り、マイティにぎゅうーっ、と抱きついた。 「わああっ、ねここちゃあんっ!?」 頬をすりすり、背中やわき腹や言えないようなところをさすりさすり。本人は無意識にやっているのだろうが、 「やぁ、ソコっ。だっ、めぇぇ・・・・・・」 マイティはもはやまな板の上の鯉である。 周囲は肩をすくめてため息をついたり、くすくすと笑ったり、「んーまあんーまあイヤらしい」と顔を赤らめつつ見入ったり。バセットは「仲が良いのねえ」と言うばかり。 が、その中で一人わなわなと震えている神姫がいた。 なんとシエンである。 「マイティは私んだっ!」 そう叫んだかと思うと、いきなり背中側からマイティに抱きついた。 「ええっ、シエンちゃん!?」 シエンのまったく予想外な告白に、マイティはもちろんうろたえまくった。 マスターとケン、二人のオーナーは口をあんぐりしたまま一言も声が出せない。 「そこをどけっ、このどろぼうねこーっ!」 「やーなのー、マイティちゃんはねここのなのーっ」 「ちょ、ちょっと二人とも、落ち着いて、ひぁあんっ!?」 すると風見美砂の通信回線が開いた。 『もう我慢できない! 姉さん、私も参加させてください! ねここが、ねここがーっ!』 声の主は美砂ではなかった。彼女の肩に乗っていたハウリンらしかった。後ろの方ではそのハウリンをたしなめる美砂の声が聞こえている。 マイティはその喧騒の中心で、しかし奇妙な安心感を抱いていた。 戦場から一時とはいえ離れることができたからかもしれないし、仲間がいることへの安堵かもしれない。あるいは自分を好いてくれる神姫がいてくれた驚きと喜びだろうか。 何はともあれ、彼女達と一緒なら戦える。マイティはそう思った。強く。 「はうぅっ、だからソコはだめだってばーっ!」 前へ 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1990.html
第八回「いろいろと変わる事」 時報「皆さんお久しぶり、時報タケヤです」 日暮「日暮です、随分と間が開きましたね…」 時報「何々? 最初の話題は第一回の更新?」 日暮「時の流れと共に作者の思うイメージが変化した、との事らしいです」 彩聞 形人 白石稔 ヒカル 田村ゆかり ジーナス 松元恵 氷男 聖憐 遠藤綾 零牙 高木礼子 飛竜 一深 清水香里 リック 永田亮子 風間 健人 保志総一朗 グレース 笹川亜矢奈 真 光一 浪川大輔 マオ 中原麻衣 長瀬 祁音 小野大輔 ラスター 阿澄佳奈 ジュラ 松岡由貴 ベルクト 加藤英美里 グラーチュ 折笠愛 メィーカー 折笠富美子 彩聞 令佳 桑谷夏子 時報タケヤ 大川透 日暮 小林ゆう 日暮「…ひぐらし出演者が多いのは相変わらずですか、というか私悟史なんですか」 時報「最近の人で合う人が思い当らなかったらしいよ。僕に大川さんが充てられるのは当然の結果だけどね」 日暮「次は…作品設定の変更点ですか」 1.バトルロンドを「Mighty Magic」準拠に 2.時代設定を2037年に変更 3.その他人物描写の変更など 日暮「3はバラライカが役柄の同じジルダリアに変更になったのが主ですね」 時報「執筆当時、作者はバトロンにバラライカって名の黒子が居たのを知らなかったのもあるね、あと…」 日暮「あと?」 時報「バトロンの所為でジルダリアのキャラが嫌いになったらしいよ? 次点はマオチャオだとか」 日暮「…ああ、あの独特な性格設定ですね。最後は次回作についてですね」 時報「なになに? 「まだ主役神姫が決まってない」……」 ナ ゝ ナ ゝ / 十_" ー;=‐ |! |! cト cト /^、_ノ | 、.__ つ (.__  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・ ,. -─- 、._ ,. -─v─- 、._ _ ,. ‐ ´ `‐、 __, ‐ ´ ヽ, ‐ ´~ `´ ̄`‐、 / ヽ、_/)ノ ≦ ヽ‐ ´ `‐、 / / ̄~` ‐- 、.._ ノ ≦ ≦ ヽ i. /  ̄l 7 1 イ/l/|ヘ ヽヘ ≦ , ,ヘ 、 i ,!ヘ. / ‐- 、._ u |/ l |/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、l イ/l/|/ヽlヘト、 │ . |〃、!ミ -─ゝ、 __ .l レ二ヽ、 、__∠´_ |/ | ! | | ヾ ヾヘト、 l !_ヒ; L(. )_ `ー "〈 )_,` / riヽ_( )_i _( )_/ ! ‐;-、 、__,._-─‐ヽ. ,.- 、 /`゙i u ´ ヽ ! !{ ,! ` ( } ( )〉 ´(. )`i |//ニ ! _/ ! ,,..ゝ! ̄ ̄ ̄ ̄ ゙! ヽ .゙! 7  ̄ | トy / _,,. -‐ヘ ヽ、 r ´~` ‐、 / u !、 ‐=ニ⊃ /! `ヽ" u ;-‐i´ ! \ ヽ `ー─ / u ヽ ‐- / ヽ ` ̄二) /ヽト、 i、 \ ..、 ~" / (●) (●) ヽ.___,./ //ヽ、 ー / ゝ .! \ `‐、. `ー;-- ´ \___/ /イ;; //〃 \ __, ‐ / / \ ヽ \ \ / ヽ . \/ /i . //  ̄ i / / 時報「って、突然出てきてなんだい!?」 形人「いや、AAの数合わせだそうです。それじゃ」 ヒカル「またねぇ~♪」 日暮「また次回、お楽しみに…」 神姫無頼質問コーナーに戻る 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/351.html
戦うことを忘れた武装神姫 その3 珍しく早く帰宅できたので、玄関先でバイクの点検整備。 ワイヤ、オイル類のチェック、グリス塗り込み等々・・・うむうむ、良い良い。 「・・・何をされているんですか?」 工具箱の上に、アーンヴァル型のイオがいつの間にか腰掛けていた。 「見ての通りだよ。俺の愛車の整備。」 「マスターはマメですね。」 「マメっつーか・・・しばらくほっらたかしだったからね。いい加減可哀想で。」 「この子も、マスターに愛情を存分に注がれているんですね・・・。」 「愛情・・・でいいのかなぁ、この場合も。」 「いいんです、きっと。」 そう言いながら、そっと月明かりにイオの笑顔が浮かぶ。 柔らかな笑顔に、俺もほっと一息。 「うーん、イオもずいぶんと成長したねぇ・・・。来た頃なんて、まずひとりで 外に出て来ることなんか無かったのに。」 整備の仕上げとして、余分なチェーンオイルを拭き取りしながら声をかけた。 「だってマスターが・・・ 外の世界の広さを教えてくれたから・・・」 と、ひょいと飛び上がり、イオはバイクの上に移動するハズだったのだが。 「え・・・きゃっ!!」 バイクのブレーキホースに足が引っかかって勢い良く進むベクトルが変わる。 ぐりん。 ごいん。 よりによってタンクの金属部にバーニア噴射状態で突撃、頭強打。 もんどり打つように落下した先には・・・ 真っ黒のウエス。 も゛ふ。 廃棄直前で、べっとべとのウエスの上に、狙いすましたかのように落下したイオ。 「う、うえぇ・・・またやってしまいましたぁ・・・。」 真っ白なボディが、繊細な顔が、油ででろんでろんになってしまった。 ヘッドユニットも斜めにずれて、今にも泣き出しそうなイオの顔に・・・思わず ドキッとしてしまった。 いかに学習が進んでも抜けないから天然、か・・・。 まぁ、そこがこいつのチャームポイントなんだよね。 戦場には赴かず、洗浄される神姫がいる。 そう、ここに居るのは戦うことを忘れた武装神姫。。。 <その2 へ戻る< >その4 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2728.html
バトルも終わり、私たちは一息ついていた。バトルの後のココアと言うのも、また一味違ったものがある。 「うー、モウヤメルダッって感じで撃った渾身の壁抜きチャージショットをかわされるとは思いませんでした」 「勘で避けた」 「嘘ですっ!」 嘘は言ってない。むしろ事実しか言ってない。 「まぁまぁエリーゼも落ち着いて下さい。今回のバトルは僕の判断ミスです」 レールアクションからのインファイトは柏木さんの指示らしい。「アーンヴァルは基本的に高高度からの射撃戦がメインなんだから自分から近距離戦を仕掛けちゃダメ。M8ライトセイバーとかの近距離武器はあくまで保険。どうしてもインファイトしたかったら高高度射撃型のペガサスモードじゃなくて近接型のユニコーンモードでよ」と華凛は言っていた。 「華凛、私はどうだった?」 「んー、100点ではないけどいいんじゃないかしら。シリアとの息もピッタリみたいだったし」 確かに戦闘中、言葉にしなくてもお互いの考えがわかった。最近私は自分でブースターを使っていない。それでも、相手に肉薄するときブースト移動するとき、まるで自分がブースターを使っているような感覚だった。武器の出し入れもそう。あれが、神姫と一つになると言うことなのだろうか。 「自信、ついた」 「うん、あれなら本番で使っても問題ないよね」 これで武装面の今のところの問題点は解決された。これならまた宮下さんのようなマスターが来てもいい勝負が出来るだろう。 「名前はどうしよう」 「そうだなぁ、短機関銃をストーム。薙刀は……トルネードとか?」 嵐と竜巻を意味する英語だ。なるほど、銃弾の嵐、薙刀の竜巻というわけか。わかりやすい、ありだ。 「ねぇ、どうかな華凛……華凛?」 ふと横を見ると華凛がこっくりこっくりと船を漕いでいた。何だかうなされているように見える。 「華凛」 「えっ……あ、樹羽……」 顔をあげた華凛は額に大粒の汗を掻いていた。さっきまで起きて話をしていたのに、何があったのだろう。 「ごめん、ちょっと日々の疲れがね。今日なんてこの炎天下に学校行ってたし」 立ち上がる華凛だが、足元がおぼつかない。やはりすぐにソファに座り直してしまう。 「華凛、今日は帰った方がいい」 「……でも」 「てい」 何か言おうとする華凛の唇に人指し指を立てる。触ってみてわかったが、華凛の唇はカサカサだった。 「だめ。今日は帰って早く寝て」 「樹羽……」 「そうですよ。華凛さん、顔色悪いですし……」 「女の子なんですから、体は大切にしてくださいよ?」 「ま、そういうことですね」 渋った華凛だが、みんなに諭されようやく折れたらしい。 「……わかったわ。その代わり、明日もゲームセンターだからね」 「うん、元からそのつもり」 華凛は柏木さんが送ることになった。その間、私が店番をすることに。 「じゃあ、すみませんが店はお願いします」 「華凛をよろしく」 ばたんと扉が閉められる。一応カウンターに接客マニュアルと言うのがあって、これを見ればだいたいのことはわかるらしい。パラッとめくってみる。『お客様が来店したら大きな声でいらっしゃいませ!』。うん、いきなり無理難題。 「そんなことないって。やってみたら案外出来るかもよ?」 「……ぃ、ぃらっしゃいませ……」 「もっと大きな声で!」 「い、いらっしゃいませ」 「複式呼吸で大きく息を吸って、はい!」 「いらっしゃいませ!」 「ほら、やれば出来たじゃん」 今のでいいのだろうか。まぁ、シリアが良いと言っているのだ。いいんだろう。 しかし、この店はえらく客入りが悪い。こんなことをしても無駄ではないだろうか? 「備えあれば憂いなし。転ばぬ先の杖って昔から言うでしょ?」 確かにその通りではあるし、納得も出来る。だが、私にとって大声をあげると言うのはかなりの重労働なのだ。もし来なかったらどうしてくれよう。柏木さん辺りに何か請求すればいいのか。 その時、店の扉がゆっくりと開けられた。そこから戸惑いがありありと伝わってくる。どうやら、発声練習は無駄にならなかったらしい。 顔を覗かせているのは少年だった。私と同じくらいの身長で雰囲気的には中学生と言ったところか。入り口のところでしきりに店内を確認している。 なにはともあれ、呼んでもいない客が来たのである。私はさっきの発声練習通りに言った。 「いらっしゃいませ!」 「おうわっ!?」 何故かいきなり扉を閉められた。 「……冷やかし?」 「違うと思う……思いたい」 しばらくして、再び扉が開かれる。少年は今度はこちらを見ている。どこかで見たことがあるような気がする。気のせいだろうか? 「あ、あの……ここってお店なんですか?」 やっと喋ったと思ったら、内容がおかしかった。内装から見てここはお店に見えないだろうか? 「看板、見なかった?」 「いや、見たんですけど、ここって前まで幽霊屋敷だったものですから……」 曰く、長い間放置されていた空き家だったここは少年たち中学生の肝試し場所になっていたらしい。久しぶりにやって来たらお店になっていて、どうなっているのか見に来たらしい。 「でもここにホビーショップが出来ても、大抵駅前の神姫センターに客が流れると思うんですが……」 「お察しの通りガラガラ」 「ですよね……」 少年は同情の意味を込めて肩をすくませた。 「とりあえず、いらっしゃい」 「そうですね、せっかくだから見ていきます」 少年は店内の商品を見ていく。主に大剣類の売られている棚を。 「あれ? これ向こうより安いや。こっちも、これもだ!」 そう、ここの品物は神姫センターの物より若干安い。こんなことで経営は成り立つのか不安になったが、柏木さんは「わかる人にはわかるんです。大丈夫、売れます!」と断言していたが、現実は各も無惨だ。 少年は神姫カードを取り出した。値段と自分のポイントとを相談しているのだろう。やがて一つの武器を手にとり、カウンターへとやって来た。 「これお願いします」 「はい」 商品の値札に書いてある番号をパソコンに入力する。『カラミティブレード』と名打たれたそれは、やけに大きい大剣だった。目測15cm以上は絶対ある。 「ここに神姫カードをお願いします」 カードリーダーを差し出す。少年はそこに神姫カードを通す。 「ご購入ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」 マニュアル通りのセリフを淡々と言って頭を下げる。もっと抑揚を付けて、とカウンター下からペチペチ叩かれたが、今は無視。 しかし顔をあげても少年はそこにいた。こちらの顔をじっと見つめている。 「……何か」 「あ、えっと、つかぬことをお聞きしますが……」 少年は慌てて顔の前で手を振り、一言聞いてきた。 「あの、もしかして奏萩先輩……ですか?」 それを聞いた時、私の頭の中で数少ない知り合いリストが再生された。はたしてこの少年と私はどこかで会っているのだろうか? 「もしかしなくてもその通り」 「あぁ、やっぱり。覚えてませんか? 僕です、朱野和也(あけのかずや)です」 朱野和也、その単語でようやく思い出した。 朱野和也くん、私が中学生だった頃の後輩で華凛と同じ陸上部だった。華凛にくっついていた私は、彼に何度か会っている。すっかり忘れていた。一応言っておくが私は帰宅部である。 「朱野くん、久しぶり」 「はい、奏萩先輩はこのお店でバイトしてるんですか?」 「お手伝い。ただの店番」 給料はない。あくまでごれは一時的な処置だ。 「もったいないなぁ、奏萩先輩が売り子なら絶対行くのに……」 「朱野くん?」 「ああいやっ! なんでもありませんよ!?」 ぶつぶつ何か言っていたのだが、さすがに聞き取れなかった。あとでシリアに聞いてみよう。神姫の耳なら聞こえていたかもしれない。 「あのっ、秋已先輩は一緒じゃないんですか? いつも一緒にいましたけど……」 「華凛は体調不良で先に帰った」 「あの秋已先輩が体調不良? 雨の中3000m走ってなんともないあの先輩が?」 それは華凛伝説のうちの一つだった。台風が直撃している中「ちょっとそこまで走ってくるわね」とまるで散歩に行ってくるかのような軽さでふらっと出ていって3km走ったとか、走ってないとか。 「まさに謎の行動」 「え、奏萩先輩。秋已先輩のあの暴走の原因知らないんですか?」 「あったんだ、理由。でも……まだ知らなくていい」 知りたい気もしたが、なんとなくそれは華凛から直接話して欲しかった。今度それと無くに聞いてみよう。 「あ、そろそろ僕行きますね」 朱野くんが時計を見る。ちょうど4時を回ったあたり。 「お買い上げありがとうございました」 「あはは、また来ますよ! 今度はみんなを連れて!」 そう宣言して、朱野くんは去っていった。扉が閉まるのを確認した私は、ふっと一息ついた。やっぱり他人と話すと疲れる。 「最初よりは進歩したんじゃないかな。ほら、話すら出来なかった時に比べれば」 カウンター下からシリアが出てくる。 「ところで、さっき聞き取れなかった部分があったけど、シリアは聞こえた?」 「え!? ああ、えっと、聞こえなかったカナー……」 私が聞くと、シリアはあからさまに態度を変えた。何か隠しているような素振り。シリアは嘘がうまくない。 「……悪口?」 「ち、違うよ!」 「聞こえなかったのに?」 「うぐっ、それは……えっと……」 シリアはしばらく黙った後、 「ごめん、聞いてたけど本人に後で聞いて……」 とだけ言った。 まぁ確かにそれが一番だろう。彼はまたお店に来ると言っていたし、聞くチャンスはいくらでもあるはずだ。が、なぜシリアは今教えてくれないのだろう。謎だ。 その後柏木さんが帰ってきた。華凛は無事自宅に送り届けられたらしい。 「商品が売れました」 「いぇーーーいっ! やったーーーっ! トロピカルやっほーーっ!!!」 その事を報告すると、エリーゼは紙吹雪を散らしながらクルクルとトリプルアクセルを決めた。紙吹雪はどこにあったんだろう。 「エリーゼ、はしゃぎすぎです」 「と言いつつも、店長だって小踊りしたいぐらい嬉しいですよね?」 「当然です」 「ついでに今度は友人を誘うとか」 「天は我等を見捨ててはいなかったーー!!」 柏木さんは天に向かって両手を組んだ。もう何がなんやら。 私は二人に感謝されながら店を後にした。たかだか商品が売れたことであんなに喜べるものだろうか? それほどまでに危機的状況だった場合、あの店は一ヶ月持たないかもしれない。 ともあれ、そうしてその日は終わった。翌日は華凛と一緒にゲームセンターだ。昨日から今日にかけて使い込んだ二つの武器。これなら、明日もいいバトルが出来ると思う。 そして私は、そんな思いを胸に自宅の扉を開けた。 第九話の2へ 第十話の1へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2580.html
人と神姫と混沌としたナニカ 前書き どうも、作者のクロムと申します。この作品は、作者が書いてゆく行き当たりばったりなSSとなっています。 初めに、この作品はやむなく更新ストップする事になった前作の設定やキャラも再利用していますので同じ名前のキャラも出てきます。 あと、キャラや設定等々を借りたい御方がおりましたらどんどん使って頂いてかまいません。 ただ、キャラの死亡やこちらのシナリオに重大な影響を与えるようなのは勘弁していただきたいです。 それ以外であればコラボは大歓迎です ……心機一転頑張っていきます(汗 ※※以下、一部設定をお借りしている別作者様方の作品※※ 「Mighty Magic」 「深み填りと這上姫」 11/5 やっと…やっと……Ⅰの1投稿。 概要 人と神姫の数だけある物語、その物語の一部を、垣間見る物語………になる予定。 本文目次 「Ⅰ-0」※ほぼ会話文のみで短いです。 「Ⅰ-1」 今日 - 人 昨日 - 人 総計 - 人の来場者です 感想等はこちらへどうぞ 体調等に気をつけて、続きをお願いします。 -- ノーマル (2012-08-01 11 56 33) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2632.html
「ごめんね。同じような人がいて、つい嬉しくなっちゃって」 「……はぁ、そうなんですか」 やっちゃったなー、これは。絶対変な人だと思われてるよ。僕も逆の立場だったらそう思うし、なんでこんな暴走したのかな、僕は。 「あはは、面白いマスターさんだね」 少女の肩の神姫がシオンに話しかけてくれている。あれは火器型の神姫だったかな。 「でも、お優しいです。とり乱したのも、お友達が来なくて寂しかったんでしょう」 シオンは本心でそう言ってくれてると思うけど、それがかえって痛かったりして。 「それじゃあ、改めて。僕は長倉 螢斗。この子はアーティル型のシオンです」 「よろしくお願いします」 「私は、その……」 「リミちん、ちゃんと自己紹介しなくちゃー。ほらほら」 「あ、うん。私は霧静 璃美香です。この子はゼルノグラード型のアリエ……です」 霧静さんは言い終わったら、顔を俯かせてしまった。 「アリエでーす、どうもー。すまんねぇー、この子ちょっと人見知りなもんで」 「いえいえ大丈夫ですよ。僕も少しそういうのありますし」 「本当かなー? がっついて、リミちんに話しかけてきた時はそうは見えなかったけどなー」 「あれはっ!……ただ、お友達になれそうだなーって思ったから勢いで」 「いや、あれは一歩間違えば、ナンパの部類だね。うん」 「ナンパって。それはないよ……」 なぜかこのアリエって神姫ものすごく馴れ馴れしい。オーナーの霧静さんもオロオロとことの成り行きを見守ってるだけだし。 「とりあえず!……ここにいるという事は神姫バトルが目的なんですし、バトルやってみませんか?」 「そう――」 「そだねー。ケートん、シーちゃんとも仲良くなれそうだし。交流を深めようではないか」 霧静さんが言う前に勝手に決めている。口は開いた状態で止まった。 そしてなぜか、あだ名みたいのも了承も取らず決められている。 シオンもなにも言わないし、僕も、それはいいのだけど。 ゼルノグラード型はみんなこうなのか? それともこのアリエだけがこういう性格なだけなのか。 「ハァ……すいません。この子、誰でもこんな感じで。すいません……」 霧静さんはものすごく申し訳なさそうに頭を下げている。見た感じ、いつもこうやって苦労させられているのだろう。 「霧静さん、ちょっといいかな?」 話を聞けば僕と同じ高校一年らしいので、敬語はいらないと言っていた(主にアリエが) 霧静さんにも一応は了承もとったし、これで少しは仲良くはなれただろう。 それにまず僕はシオンのことを話しておこうと思った。 「シオンはちょっとバトルがしにくいというか……えっと、なんて言えばいいのか」 「螢斗さん、私は大丈夫ですよ」 そう言うが、実際に僕はシオンのバトルを見てはいないけど……心配なのだ。 「シオンちゃんがどうしたんですか?」 「なになに、私と同じになんか訳有りかい」 私? アリエもなにかあるのだろうか。霧静さんを伺うと、 「アリエ。それは……」 霧静さんは何か言いづらそうに口をつぐんでいる。 「まあまあ、全てはバトルをしてみればわかることさね。はーい、それじゃあみんな、台について」 アリエはそう言うと霧静さんの肩から降り立って、一人で向こう側のブースに行ってしまった。 「まったく、アリエは。とりあえず、長倉……くん」 「……なにかな」 「まずはお互い、バトルさせてみて……その後色々話してみないかな?」 頭のリボンを指で触りながら、目線は横を向いている。話すのは得意そうに見えないけど、霧静さんはそう言ってくれる。 勇気を出して言ってくれてるようにも見える。 霧静さんもなにか抱えているようなそんな感じ。 なんて、さっき知り合えた人にこんなこと思っちゃいけないよね。 「そうだね。シオン、僕たちもバトルの準備しようか」 「はい! 頑張ります!」 ―――― バトルのステージは廃墟街になっている。 さびれた廃屋やビル。むき出しのコンクリート。ボコボコ穴の空いた道路にへし折れた信号機などなど。 リアルであったなら、不気味としか言えないな。 いまそこでシオンが廃ビル群の一角に潜んでいるのが画面からは見える。 僕はオーナーブースから、シオンに語りかける。 「怖くない?」 「……大丈夫です」 大丈夫と言うが、本当だろうか。 フェリス・ファングを両手で構え、その場には緊張感が漂っているように思える。 「火器型はその名の通り、銃器を使う戦闘が得意だと思う」 僕がいままで見てきた情報では、ゼルノグラードは火力のある武装を念頭に置いている武装神姫だというのは知っている。 だけど、 “訳有り”とはどういうことだろうか。 それがさっきから引っかかる。 ――いや、でも、そんなことは後回しにしよう。 まずはシオンのバトルを見ておかなくちゃ。 僕が冷静に指示できて、シオンもバトル恐怖症が起きなかったら、初バトルで勝利できるんだ。 よし、そうと決まれば。 「シオン、敵の気配は?」 「まだ確認は出来てません。まだ近くにいないのかと」 「それじゃ、危ないけど周りを索敵してみよう」 はい、とシオンは答えると、銃を構えたまま細い通路といえる路を進んでいく。 障害物が多いバトルなら、身を隠して攻撃する戦法が有利だろう。派手さはないけど、真っ向からやりあって勝ち目はあまりないと思う。 僕の経験も少ないし、シオンはちゃんと戦えるのか心配でもある。 でも、バトルに勝てれば自分の自信にも繋がるだろうし、バトルの拒否感も和らぐかもと思った。 「螢斗さん、あの、奥にいました」 「え、気付かれた?」 「いえ、その、なんと言いますか。アリエさん……くつろいでます」 「……なんで」 見ると、開けた道路にアリエが座っていた。崩れた、腰掛けるのにちょうどいい大きさのコンクリートに座り、のんびりとしている。 軍隊の兵士みたいにペイントされているアーマー。それに身を包んでいるアリエの姿があった。戦闘状態の筈なのだけど、暇そうである。 ……そんなに時間をかけたわけではないのに。 傍らには腹にパイプみたいな筋の入った奇妙な大剣がある。武器はそれだけしかない。銃みたいな武装は見当たらない。 「どうしますか?」 シオンが訪ねてくる。どうしようかな。あんな油断している姿をみせられるなんて、よほど余裕があるのか。 弱いと思われているのか。……実際そうなのかもしれないけど。 こっちが考えていると、アリエが動きをみせた。 立ちあがり、あくびをしてから背筋を伸ばしている。リラックスしているな、と思うけど、あれは相手の罠なんだろうか。 「バレバレだよー。出てきても、いいんじゃないー!?」 片手に大剣を持ち、声を張り上げている。 いる方向に声は向けてないけど、――なんて言った? アリエはシオンが近くにいるのがわかっている。 そんなミスはしていないと思ったけど。 「しょうがない。不意をつくのは止めて出よう。真っ向から挑むけど、いける?」 「いけ……ます」 その震えは恐怖なのか、武者ぶるいなのかはまだ僕にはわからないけど、 「いくよ」 戦いを楽しめるようになればわかるのかな。 シオンが路地に飛び出す。 スラスターを作動させて駆けながら、アリエに狙いを定めてフェリス・ファングを構える。 その後の動作は引き金を引くだけなのだけど。 ――引かない。 いや、シオンは引けないのか。 やっぱり、うまく戦えないのか。あっちはもうすでに臨戦態勢に入っている。 「シオン! 接近戦に変更して!」 なにもしないのなら、ただの動く的だ。 ここは相手の武装も考えて、接近戦に持ち込んだ方がマシだ。 武器で打撃を与えるなら誰だってできる。 フェリス・ファングをしまわせ、腰からナイフを取りださせる。 宮本さんから預かった武装には、近接用の武器がなかったから、淳平から神姫用のを譲ってもらった物だ。 シオンはそれを振りかぶって、勢いのままアリエに攻撃を加える。 「おりょ。なんか、勢いのわりに軽いね。銃でなんでか何もしなかったし」 ガンッ! と場に大きな音を響かせた。 大剣で攻撃を防ぎ、少し後ずさったアリエが疑問に思っているみたいに言う。 「そっちも、なんで、その大剣しか使わないんですか? チャンスだったと思いますけど」 「うーん、私も使いたいんだけどねー。使えない理由があるん……っだ!」 言葉を途中で切らし、腕に力を込めて、気合いの声を発する。アリエは詰め寄り大剣を振るう。 シオンはそれを危なげに避けていってるが。 「なんか焦ってるねー。それじゃあ戦えないよー……」 「くっ! わかってます!」 僕から見ても、確かに顔は焦っていて辛そうに見える。 「ほらほらー」 避けきれなくなってきたシオンは、アリエが振るった大剣にナイフの刃が当たった。 ナイフは明後日の方に飛んでいく。 「バトルが楽しくなさそうだねー。それがシーちゃんの悩みなんだねー。うんうん」 「……アリエさん、わかるんですか」 「私もさー。昔に色々あってさー火器型のクセに重・軽火器類が一切使えないんだ。笑えるけどホント。だから、私の武器はこれ一本!」 どうやらそれがアリエの“訳”らしい。 自慢げに大剣を掲げて見せる。――見るとやっぱり奇妙だ。 剣の腹に細いパイプの入ったような筋、根元部分には片刃の方にだけ同じ材質みたいので覆われている。 そして、握りの鍔の方にトリガーが付いてある。 「あれって、もしかしてガンブレード?」 今も続いているテレビゲームの超大作にアレに似た武器を使う主人公がいたはずだけど。今はもう18作目に突入しているらしいゲームだ。 僕はやったことはないが、学校の友達はよくゲームの話題をする人がいるので知っている。 「オリジナルの武装なんだけどねー。公式の場でもレギュレーション以内の優れ物。それじゃあ、これの仕掛けも見せとくかー。リミちん!」 『……うん』 筐体の向こうからは霧静さんの声が聞こえる。何かを送ったんだ。 アリエの手元には、手の平サイズ、厚さのあるカード状のような物がある。 それは、赤。イスカの大剣と同じような赤色だ。 「『エレメンティア・ヒート・カートリッジ』セット完了! いくよーん!」 そう高らかに楽しそうに声をあげる。 片刃の覆われた部分を下にスライドさせて、そこに持っていたカートリッジなるものを差し込んだ。 スライド部分を引き戻すと、その瞬間パイプに赤色が現れ始めた。 「よーっし。来たー!」 パイプに溶岩のようなのが先端まで行き渡ると、鋼鉄の大剣の刃も真っ赤になり始めた。 高熱を発しているみたいだが、実際に燃え盛っているような錯覚がする。刃の周りの空気がゆらゆらと揺れてきている気が。 「覚悟してね。いっくよー」 「シオン、何か危ない、後退して! ……シオン!?」 「……あ、あ……あ」 シオンの様子がおかしい。腰を抜かしている。 どうやらシオンの焦点が集まっているのは大剣みたいだけど。 ――もしかして、イスカの、お姉さんの大剣を思い出しているのか!? でも、反応が異常すぎる。 「あ~、えーと……そっちのマスター。ケートん、見えてる、聞こえてるー! サレンダーできるー!?」 大剣を、八双の構えに留まったままのアリエが、僕に叫ぶ。このまま、やっても無駄だと思ったのだろうか。 「……わかったよ」 あっちには聞こえていないだろうけど、受け応えはしておく。 アリエの優しさに感謝しつつ、僕はサレンダーのボタンを押した。 ―――― 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」 「……シオン」 私は謝り続ける。全ては虚勢だったんだ。 戦う前は確かに自信はあった。螢斗さんの為に戦えると思った。 でも、やっぱりダメだった。アリエさんの武器がお姉ちゃんの大剣に見えてしまった。その後はもう無理だった。 こんな私なんて、武装神姫じゃない。 こんな私なんて、ただの人形だ。 そして、螢斗さんの手が私の頭に移動してきて、 「大丈夫だよ。大丈夫」 「……あ、」 優しく指で頭を撫でられる。 不思議だ。 この人に撫でられると安心する。凛奈さんとお姉ちゃんの所で、まだ仲が良かった、時にも感じたことのない安心感。 なんで私は螢斗さんの為に戦えないのだろうか。 今はそれが悲しくて仕方なかった。 ―――― 謝るのは止まった。 でも、慰め続けているけど、なかなか泣き止んでくれない。 僕も多少はショックだったけど、バトルがうまくできないのはわかってはいたし。 過剰反応したのは、驚いたけど、しょうがないのかもしれない。 バトル恐怖症に加えて、凛奈さんとイスカの頃の記憶がトラウマにもなっているのかな。 なんとかこれを乗り越えさせないといけないのか。 僕にできるのか。 だけど、しなきゃシオンが幸せになれないんだ。 しないといけないんだ。 「ハロー、ケートん、シーちゃん」 アリエと霧静さんが近くに来てくれていた。 あんなシオンを見たらそれは心配になるだろうな。 「シオンちゃんは……大丈夫?」 「うん、まあ、大丈夫だよ」 多分と付け加える。 「バトルして、こっちのことも、わかってくれただろうけどさー……なんかそっちの方が深刻そうだねー」 「……確かに、そうみたい」 シオンとアリエを交互に見て、考え込む様子の霧静さん。 火器類の武装を使えないらしいアリエと戦うことができないシオンはどっちが辛いのだろうか。 このままバトルはしない方がいいのだろうか。 でも、それは――。 だめだ。やっぱり、うまくいかない。 「長倉くん。ともかく、私たちに話してみないかな。ほら、アリエもこんな神姫だけどなにかアドバイスできる……かも」 「こんなのとは酷くないですかい」 そう言われても、アリエは別段気にしてないように見える。 あんな風に気楽なのはもう割り切っているからなのかも。 「シオン、いいのかな。話しても」 「……はい……大丈夫……です」 なんとか涙を止めたシオンが頷いてくれた。 ――シオンのことをちゃんと話しておこう。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1223.html
西暦2037年、6月の始めごろ。 世間一般ではMMS(人造人間)の一つである「神姫」が流行っている。 同級生や、友人の風間も所持しており、休み時間はちょっとした神姫舞踏会だ。 …だが、僕「彩聞形人(さいもん けいと)」には関係のないことでもあった。 「なぜ?」と聞く人もいるが、その系の質問にはこう返している。 「友人ならいるし、わざわざ金溜めて「ともだち」を買う気にならない」 しかしその「関係のない事」とは、ある人物の帰宅によって繋がったのである。 「神姫が手元にやってきた」 ある人物とは、国際線の機長をしている父であった。 しかも某漫画の機長なみに色んなところに飛んでいるとゆう、年甲斐もなく元気な人である。 そのため年に会う機会は少ないし、休暇の日なんてもっと少ない。 過重労働で組合に申し立ててもいいくらいだ。 「形人、だいぶ遅れたが高校進学祝いだ」 そう言って父から大きめの紙袋を渡された。 紙袋の中に入っているものを取り出すと、1つは高さ26cmほどの箱。 もう1つもどっこいの大きさだ。 どちらも包装紙で包まれており、中身が何なのかは判らない。 「開けていいかな?」 「俺としては、部屋で「あっ!」と驚いてほしいな」 「わかったよ」 母に「夕食が出来たら呼ぶからね」と言われつつ、僕は二階への階段を駆け上がった。 ~・~・~・~・~・~・~ 自分の部屋に入り、机のイスに腰掛けつつ紙袋から箱を取り出し、包装を破き始める。 「サイズからしてスケールモデルではないと見た…、ん?」 箱にアニメ調で描かれていたは、機械を身に纏った少女。 箱の右下面には「Multi Movable System」の文字 そして右上面には「武装神姫」の文字があった。 「武装神姫…」 『あっ!』では無かったが、少し驚いたね、これには。 "関係ない"と思っていた物をこれから起動することになるのだから。 しばらく説明書を流し読み、基本的な事は覚えた。 説明書や箱を見て知ったのだが、この武装神姫はMagic Market製の形式番号MM08SR、セイレーン型神姫「エウクランテ」だとゆう。 ちなみにセイレーンとは、海に住みその歌声で船を遭難させる、下半身が鳥類の女性の姿をした精霊のことである。 英語ではサイレン、イタリア語でシレーヌと言うのだとか。 セットアップをしようとブリスターを開く。 そういえば、CSCとかいう中枢部が見あたらないな…。 「…んっ…」 思わずドキッとした。 おかしいな、ギャルゲは起動していない筈だが…? 「ん…ふぅあぁぁぁっ…」 開いたブリスターに動く小さい姿。 声の主はコレか…ていうかセットアップ終わってるのかよ!? 「ん…。わたしのオーナー、ですか?」 「あ、ああ。彩聞形人といいます」 何丁寧語になってるんだ僕!? 「『彩聞形人』…登録完了。わたしの名前は決まってるの?」 「えーっとだなぁ…」 まずい、考えてなかった。 どうする…? とここで、偶然視界に入ったのは超時空要塞マクロスのノベライズ版…。 「そうだな…、"ヒカル"。輝くと書いてヒカルだ」 「"ヒカル"…か。なら今からわたしはヒカルね」 どうやらOKみたいだ。 「よろしくね!形人」 呼び捨てかそうですか。 …これも個性か、なるほどなぁ…。 ~・~・~・~・~・~・~ 「……」 さっきからヒカルは本棚の端にあったマンガ文庫を読んでいる。 読んでいる本は「ファントム無頼」である。 史村翔・原作、新谷かおる作画の自衛隊漫画で、今では退役した(37年時点)F-4EJファントムⅡで空を翔ける航空自衛隊百里基地所属のパイロット、神田鉄雄二尉と栗原宏美二尉の物語である。 …と、誰も聞いていないのに頭の中で説明してしまう自分。 どんな状況でも説明してしまうあたり、完全にくせだな。 ヒカルは何に惹かれたのか? …大空を愛する心は同じということかな。 とか何とか思ってたら、下からお母さんが呼んでいる。ああ、晩飯の事忘れてた。 「じゃあヒカル、ちょっとメシ食ってくる」 「あ、うん」 ページから目を離し、こちらを向いて答えるヒカル。 部屋を出るときに、「神田さん…v」と言うひとり言か聞こえた気もするが、気のせいだと思う。 こうして「流れ流れて神姫無頼」の幕が切って落とされた。 「無頼」って「定職を持たず無法な事をする人」の事を指すのだが、神栗は「(航空法などで)無法な事をする人」だから無頼なのかと一人納得しつつ、今回は筆を置こう。 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ